日独交流160年 歴史と未来を映し出すアバンギャルドなウォールアートがドイツ大使館の外壁に登場
ドイツ連邦共和国大使館はアートエージェンシーTokyoDex と共に、日独交流 160 周年を記念したウォールアート(壁画)を公開します。これは、TokyoDex のキュレーションのもと、大阪を拠点とす るアーティストユニット WHOLE9 が大使館の外壁に、両国の先駆者たちの巨大肖像、そして日独関係の長い歴史を象徴する出来事を入念なタッチで描いたものです。作品は1月28日の完成予定で、その後2021年の年末までドイツ大使館の外壁を飾ります。
今から遡ること 160年前、1861年1月24日に当時のプロイセン王国と徳川幕府との間で締結さ れた日普修好通商条約が日独関係の幕開けとされています。これまでの長きにわたる交流に思いを馳せ、ドイツ大使館は TokyoDex に依頼し、日独関係に大きな貢献を果たした先人たちと両国の歴史を振り返える作品を展示することにしました。TokyoDex のキュレーションのもと、全長 80 メートルあるドイツ大使館の外壁にウォールアートが施されるのは、これで 3 回目です。
壁画は、医学・科学、文化、貿易・経済、音楽、スポーツ、政治の6つのセクションに分かれていま す。それぞれの分野ごとに、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトや森鷗外など日独交流の先人た ちや、旧東ドイツ出身の指揮者クルト・マズアや数々の賞を受賞した振付師、ピナ・バウシュなど現代のドイツを代表する人物がフォトリアリズム様式で描かれています。セクションごとに QR コードが 付されていて、読み取るとドイツ大使館のインスタグラムアカウント(@germanyinjapan)に転送され、 詳細な情報を得ることができます。
各人物の肖像とともに日独両国の歴史を象徴する出来事も描かれており、時の流れに沿って、坂を下る形になります。作品で最も大きな部分を占める政治分野では、両国の暗い歴史であるファ シズムの台頭や軍国主義、そして戦争の惨禍も取り上げられています。
過去の記憶とともに描かれる未来への明るい展望。ドイツ人商人も活動していた出島や、アジアで初めてベートーベンの交響曲第9番が演奏された板東俘虜収容所の記憶は、今日両国が掲げる 多国主義、法の支配、民主主義や人権などの共通の価値へとつながっていきます。作品はまた、個人レベルの交流から社会レベルの交流へと発展を遂げた日独関係の道のりを描き出しています。
■ドイツ連邦共和国大使館およびアートエージェンシーTokyoDex 代表者からのコメント
駐日ドイツ連邦共和国大使イナ・レーペルは「日独の国交はフリードリヒ・アルブレヒト・ツー・オイ レンブルク伯爵率いる使節団が日本を訪れたことにより始まった。この度、両国の長きにわたる交 流をたたえ、やはり外交『使節団』であるドイツ大使館の外壁を飾るのに大変ふさわしい、素晴らしい作品だ」と述べています。
ストリートアートを含む様々なジャンルに影響を受けてきたアーティストユニット WHOLE9 の hitch 氏と simo 氏は、ライブペイントと壁画制作を得意とし、経験とセンスを活かしたハイクオリティな作品 を作り上げてきました。TokyoDex のクリエイティブ・ディレクター、ダニエル・ハリス・ローゼン氏は「フ ォトリアリズムと大胆な色彩によるエネルギッシュな抽象表現を融合させた彼らの独特のスタイルによって、日独両国の豊かな歴史の本質を捉えながら、教育的かつ刺激的な作品となっている」と語 っています。
WHOLE9 は壁画の制作について「日独交流 160 周年という節目のプロジェクトに関われてとても光栄だ。全長 80m の壁全面という規模は我々にとっても最長のものなので、胸が高鳴った」と話しています。また、ドイツという国については「ベルリンをはじめ、アーティストにとってとても良い環境だと聞いている。今回描くモチーフについて、様々な参考資料を見たり、改めてドイツの歴史について学んだことで、以前よりも身近に感じられるようになった。この壁を仕上げ、いずれはドイツでも作品を制作したい」と語りました。
壁画の政治セクションの前に立つアーティストユニット「WHOLE9」の hitch 氏と simo 氏